閉経前女性の卵巣がんのリスク予測モデルの研究は、主に専門の超音波検査技師がいる2次検査以降の環境下で行われており、非専門医、プライマリケアまたは地域設定で一般化するには限りがある。すべての検査を直接比較した研究も見当たらないことから、英国・Sandwell and West Birmingham Hospitals NHS TrustのSudha Sundar氏らは、閉経前女性の卵巣がんの診断に寄与する最適なリスク予測モデルを特定する前向きコホート研究「ROCkeTS研究」を行った。現在、英国の国民保健サービス(NHS)の3次医療のトリアージで使用されているRisk of Malignancy Index 1(RMI 1)(閾値250)と比較して、他のほとんどの検査指標は、特異度は低いが感度が高く、なかでもInternational Ovarian Tumour Analysis(IOTA)のADNEXモデル(閾値10%)の感度が最も高く、特異度の低さは他の検査と同程度であることが示された。著者は、「IOTA ADNEXモデル(閾値10%)を用いた超音波検査を、2次医療における閉経前女性のトリアージとして新たな標準検査とすべきである。実施に当たっては、スタッフのトレーニングと質保証を組み込む必要がある」とまとめている。BMJ誌2026年1月28日号掲載の報告。
6つのモデルについて比較
研究グループは、非特異的な症状を有し、血清腫瘍マーカーCA125値の上昇または画像検査異常を認め、主にNHSのがんが疑われる患者の緊急紹介制度を通じて一般診療所から紹介された患者を前向きに登録した。
IOTA画像診断用語の使用について訓練を受けたNHSスタッフが実施した血液検査と超音波検査を用い、6つのリスク予測モデルとスコアの精度を比較した。使用した指標は、RMI 1(事前に設定された閾値は200、250)、卵巣悪性腫瘍推定値(Risk of Malignancy Algorithm[ROMA])(7.4%、11.4%、12.5%、13.1%)、IOTAのAssessment of Different Neoplasias in the adnEXa(IOTA ADNEX)(3%、10%)、simple rules risk model(IOTA SRRisk)(3%、10%)およびsimple rules、ならびにCA125(87 IU/mL)であった。
患者は、手術標本、生検組織または細胞診の病理検査、または手術を受けなかった患者に対する12ヵ月間の経過観察で得られた参照基準に基づき、原発性浸潤性卵巣がん群と良性または正常群に分類された。なお、研究対象集団は、2018年6月より前に登録されたコホート1(保存的治療の患者も登録)と、2018年6月以降に登録されたコホート2(3ヵ月以内の手術予定患者のみを登録)で構成された。
主要評価項目は、卵巣がんの診断精度で、感度、特異度、陽性および陰性予測値、判別能(C指数、ROC曲線)および較正能(較正プロット、較正勾配)により評価した。
2015年6月30日~2023年3月23日に、英国の23施設より紹介された適格患者2,453例が登録され、2023年3月31日まで追跡調査を行った。本論では、2,453例のうち閉経前女性1,211例について報告されている。
IOTA ADNEX(閾値10%)が優れる
閉経前女性1,211例のうち88例が原発性卵巣がんと診断された。コホート1では857例中49例(有病率5.7%)、コホート2では354例中39例(有病率11.0%)であった。
原発性卵巣がんの診断(他の診断58例を除外した799例)において、RMI 1(閾値250)の感度は42.6%(95%信頼区間[CI]:28.3~57.8)、特異度は96.5%(95%CI:94.7~97.8)であった。RMI 1(閾値250)と比較し、CA125と他のすべての検査は感度が高く(CA125[閾値87 IU/mL]:55.1%、p=0.06、ROMA[閾値11.4%]:79.2%、p<0.001、IOTA ADNEX[閾値10%]:89.1%、p<0.001、IOTA SRRisk[閾値10%]:83.0%、p<0.001、IOTA simple rules:75.0%、p=0.01)、特異度は低かった(それぞれ89.0%、73.1%、75.1%、76.0%[いずれもp<0.001]、95.2%[p=0.06])。なお、IOTA simple rulesでは、799例中120例で結果を確定できなかった。
卵巣がん発症リスクが高い閉経前女性354例を含む全コホート1,211例の解析でも、同様の結果が得られた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)